スリランカ人の器用さを生かす
実はスリランカ人が器用な民族であることは、あまり知られていません。
スリランカで生活してみると最初は荒々しい世界に見えたものの、その粗野の中に繊細を感じることがありました。
例えばカレーを代表とする料理。数十種類のスパイスを調合し、ダール、オクラ、イモ、フィッシュ、チキン等々、何種類ものカレーを食卓に並べるわけですが、これら全てはアーユルヴェーダ思想に従い、健康に留意した意味合いが含まれているという。長い歴史と風土がなせる匠な業。
民芸品も然り。木彫りの人形、レリーフ、「バティック」と呼ばれるろうけつ染めなど、ピンきりではありますが「キリ」の方に目を向けると物凄い良品に巡り合うことがあります。ちなみにかつて『スリランカ鉄道旅行』の写真家として活躍した畑地がマータレーで購入したフクロウの絵柄のバティックは土台がきめ細かく描かれ、その上に色を線からはみ出させず丁寧に作り上げられていました。
同様に、アパレル類もきめ細かさが輝きます。こちらもピンきりですが、コロンボやキャンディに構える国産高級アパレルショップ、いわゆる「キリ」を覗けばお分かりいただけるかと思います。その他に現地NGOがスリランカ人の器用さを生かし、内戦で被害の大きかったキリノッチで縫製工場を運営しているとのこと。
車の運転にも繊細さを感じることがあります。彼らの運転を見ていると「我先に」といった雰囲気で追い抜ける車は対向車線にはみ出し無理してでも追い抜き、その追い抜いている最中の車の後ろ側から更に早い車が二重に追い抜きに掛かる……。我々日本人の眼には危なっかしい暴走運転にしか映りませんが、冷静に状況を分析してみるとこれが存外事故を引き起こさないもので驚かされます。スリーウィーラーに乗ってもドライバーのテクニックが冴え、運が良いだけかもしれませんが、今まで危険な思いをしたことはほとんどありません(外国人が乗車する場合いつも以上に丁寧さを発揮しているのかも)。もちろん100%安全というわけではなく、飲酒運転をやらかし危険回避に失敗してクラッシュ、谷底に転落したり列車に突っ込んだりするケースも見られ、感心しない面も多々あります。
そもそも6世紀のポロンナルワにあれだけの灌漑設備を築き上げスリランカ人のだから、民族としては技術力や先見の遺伝子が秘められていると思えてなりません。
歴史ロマンの話はともかくとして、壊れた機器類や自動車の修繕内容を見ても器用さが分かります。他のアジア民族と比べてみても優れているほうと思います。そしてその器用さを生かせれば、ビジネスとして盛り上がるのは言うまでもありません。例えば日本の巷で出回っているフィギュア。正直なところ近年は造形が今一で、服の色が皮膚にはみ出てしまったり、髪の毛の形はあるのに肌色が残っていたり……一体どこの国で作っているのかと思って背中や足の裏を見てみると大体が“Made in China”の表記。器用なスリランカ人に作業をさせた方が仕上がりは良くなるのではないでしょうか。問題は人件費ですが、1人当たり¥30,000/月でいかがでしょうか。